会社1

2003・6・8 

夏期講習の広告を5月に作り、広告代理店に渡した。
それがもうできていて、今は配っている。
有名小学校の近くでのちらしまき。
校舎の近くでのポスティング(ポストに入れていく)。
そのどちらかだ。枚数は2時間で100〜200枚をさばく。
今日はそんなポスティングの1シーンをつらつらと書こうかなと思う。


「ここどこだろ・・・」
私は早速迷っていた。
今広告を入れた白塗り壁のオシャレな家には、「加藤」という表札がくっついている。
「加藤」をキーワードに、今の場所を探ってみようか。

「加藤・加藤・・・」
手元にある地図で「加藤」の名を探す。
・・・って、こんな細かい地図から「加藤」なんてありきたりな名前がすぐ見つかるわけないじゃん。
「どこだよ。もー」
涙が出てくる。
戻ることできるのかなぁ・・・。
時間はもう4時。5時から授業。
4時40分には生徒が集まってくる。
「こんなんじゃギリギリだよぉ」
頭の中に、可愛い(でも生意気)な生徒の顔が浮かぶ。

(今日の漢字テストは任せてよ)
毎回そう言ってはりきってくれる湯口君。
(1問しか合ってないしー)
文章題が苦手でも、取り組む姿勢は誰にも負けない酒本君。
(これでいいのか分からないけど・・・)
頭がいいのに、自信なさげに答えてくれる宮崎さん。
・・・などなど。

まぁ、でも残りはあと3枚だし、金もってそーな家に適当に入れてから考えるかな。
そう思い直し、金持ちそーな家を探してキョロキョロする。

あの花壇は見たことあるぞ・・・。ってことはさっき入れたかな。
あの「犬注意」シールは見たことあるぞ・・・。ってことはさっき入れたかな。
あのさびた自転車と古びた家は見たことあるぞ・・・。ってことは、さっき避けたかな。

・・・ここ、さっき通ったんじゃないか?
・・・ふふん。仕方ないなぁ。広告は早くさばきたいし。
あのさびた自転車の家に入れてしまうか。
実はお金を貯めてるかもしれんしな。

早く仕事を終わらせたい私は、その家のポストに広告を入れることにした。
ポストくらい、もっとキレイにしとけよな・・・。
心の中で呟きながら、さびついたポストに入れる。
「あ」
突然後ろから声がした。
なんだろうと後ろをふりむく。
「・・・あ」

にこりとひきつりながら笑う私。
ダッシュでこちらへ向かう、小学生。

とりあえず、過ぎ去ろう。

すたすたっと笑いながら歩く。
小学生は見向きもせず、私とすれ違った。
ポストへと急ぎ、色々なものをつまみだす。
その勢いで、玄関をガラガラっと開けた。

「ただいまー」

私は足早にそこを去る。

きっと広告を見せながら言うのだろう。

「こんなの変な人が入れてたー」

とか何とか。

間違っても「変なおばさん」にはするなよ。
そう寂しく心の中で脅しながら・・・。

複雑な思いで、また地図と睨み合った

(授業前にちゃんと帰れました)


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