郷愁

今までどうやって生きてきたんだっけな。
全部ひっくるめて、成長した気もするんだよ。
でも、細かいところを考えてみると
ダメになったところとか。
なくしたこととか。
気づかなくなったこととか。
いっぱいあるんじゃないかなって思う。
 
なんだか、たくさんの人に助けられてきたね。
たくさん心配かけたな。
大きくはなったけど。
まだ、そのへんは変わらない。
 
 
昔はとってもガムシャラだったな。
一生懸命で。
1つのことしか見えてなかった。
その1つのことのために、計画表なんか作ってさ。
ウーンってうなりながら。
自分の理想に向かってがんばってて。
その先には、ぼんやりと、
理想の自分が待ってるんだなって。
漠然と信じてた。
 
大人になった自分なんて想像もできなくて。
今の延長が大人なんだって、
そんな当たり前のことすら分からなかった。
 
 
不思議だね。
今は、想像だにしなかった大人になった自分でいるんだ。
誰かが魔法をかけて時間を早送りにしたみたいに。
今の自分の位置すら、信じられないよ。
 
私は私で。考え方も昔とあまり変わらないまま。
私は私で生きている。
感じている。
周りの人みたいに社会人の気分で愚痴ったりはできない。
だから、なんだか置いてかれているような気がするよ。
私はまだ甘ったれのままで。
それでいいのかなって思う。
でも、いきなり大人なんてなれないし。
私の考えてる大人になんて一生なれないのかもしれないし。
うーん。
よく分からないね。
 
でも1つだけ変わったことはあるよ。
子供の頃よりもずっと、優しくなれた。
人を好きになれるようになったよ。
それだけはホント。
 
だんだんと角がとれて、まぁるくなっているのかな。
 
 
それでも時々、帰りたくなるよ。
 
もう1度、もうなくなってしまった学校に行きたくなる。
休み時間になると、校庭のブランコに走っていって、
隣のクラスに取られないようにするの。
授業の終わりがけには走る準備して、
ダッシュで行くんだよ。
勝利した心地よさの中、友達と2人乗り。
馬鹿だったな。

今はもうないけど。

他の学校と合併して、あの学校はなくなってしまった。

引越しもして、思い出の場所は見ることもできない。
卒業してから遊びに行った三宅先生も、
知ってる人はもう、あそこにはいないんだ。
誰もいない。
学校がないんだから、
当たり前だけど。
 
花の蜜をあげていた孔雀ももういないね。
鍵をかけ忘れて、孔雀は校舎の上に飛んで逃げたよね。
先生たちが必死になって網で捕まえた。

図工の時間は宍道湖の絵を描いたな。
弟と一緒に表彰されたりしてさ。
でも、自分では全然納得いかない出来で。
きっと、転校生だからサービスしてくれたんだな。
でも、絵が飾られたあの教室も、もうない。

バレー部でさ、サーブだけは上手くて。
試合で1度だけ出してもらったな。
でも、線をこしちゃいけないって緊張してたから。
取りやすい下手なサーブになっちゃった。
もう、汗を吸い込んだ体育館もないけど。
 
思い出は頭には残っているけど。
だんだんと薄れていって。
時が経つにつれて、思い出す場所すらなくなって。
風化していく。
 
時々懐かしみたくなるのは、
やっぱり年をとったからかな。
大人になったからかな。
 
今まで会った人、皆と
また会える日が来ればいいな。

 
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