+ 夢小説1 +


2002年10月13日 「階段」

「ふっふっふ・・・観念しな」
 トンガリ頭の金髪男は私を見下げて脅した。
「出口は1つ。俺の後ろだけ」
 不敵な笑顔を浮かべ、彼は私ににじり寄る。
「逃げ道はねーんだよ!!」
 後ろ手にドアの鍵を閉めると、私の肩を勢いよく掴む。
 ああ・・・このまま犯されてしまうの!?
 こんなトイレの中で?
 ダーーーリーーーーン!!

「ああああああああ!!!」
 私の必死の思いが通じたのか、金髪男はいきなり叫び始めた。
「俺は・・・俺は・・・」
 突然床に突っ伏す。
 なぜか、周りはトイレだったはずなのに、古い道場のような建物になっている。
 彼は、古びた木の床をドンドンッと拳で叩き、猛烈に悔しがる。
「俺は・・・なぜ今・・・体が女なんだ・・・」
 よく見ると涙まで流している。
 私は急に、その男のことが可哀相になってきた。
「体が女なの・・・?」
 優しく頭をなでながら、静かに聞く。
「ああ。ある女にぶつかったら、首から下だけ女になっちまったんだ・・・」
「そっか・・・」
 きっと苦しかったんだろうな。
 彼の苦しみ、どうしたら取り除くことができるだろう・・・。
「くよくよしたって、何も始まらないわ!!」
 私は勢いよく立ち、彼に手を差し出した。
「こうしている間にも、敵は私達を探していることでしょう」
 道場の外に目をやる。
 そこには晴れわたった青い空。
「まだ生きている。それだけだってすごいことよ」
 彼の手を握り、勢いよく体を起こす。

「さぁ、走りましょう!! 最後まで走りつづけるのよ!」
 彼も何かが吹っ切れた爽やかな笑顔になり、私に頷いた。
「ああ、そうだな。その通りだ」

 私たちは、目にも止まらぬスピードで、屋上を目指し、非常階段を上った。
 転びそうになったらお互いに支えあい、力を合わして上を目指した。
 道場がなぜかビルになっていることなんて気づきもせず。
 上へ上へ・・・。

 息もきれ、足元もふらつくようになった時・・・。
 非常階段の側にある窓から見知った顔が飛び出した。
「おい。うめにょん」
 あ・・・。
 そこには、マイダーリンがいた。
 金髪男にダーリンだと悟られちゃいけない。
 バレナイようにしなきゃ。
 私は、すでにこの時、金髪君ゲット計画を頭の中で練っていた。
「なによ。何か用?」
 金髪君の視線を気にしながら、さりげなく聞く。
「何で非常階段のぼってんだ? エレベーターあるぞ」

 なにぃぃぃぃ!!!
 私と金髪君は、力をなくし、そこにへたりこんだ。
 今までの汗と涙の苦労は何だったんだ・・・。
「そんなに面白いマンガじゃないな」
 いつのまにか、私は本屋で立ち読みをしていた。
 マンガの中には、金髪君が何かを叫んでいる絵があった。
 パタンとページを閉じる。
「もっとろくな本ないの?」
 隣にいる先輩に聞く。
「ないんでない? アイスでも食べに行ったほうがまだマシだよ」
「んじゃ、そーするー」


 私は、その先輩と一緒に、陶磁器屋さんの店に入っていった。
 日に日にヒゲが長くなるタヌキの置物に魅入っていたら、バスの集合時刻に遅れたのは、きっと先輩のせいだろう。

 



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