+ 夢小説U−4 +


2003年12月18日 「スパイ」


 やや酔っ払った3人の男が2人の女の人に声をかけていた。
 女の人たちもマンザラではなさそうで、その誘いに乗りかけているようだった。
 水商売風の女の人たちだ。
 ……あの人たちにしようかな。
 私はターゲットをその集団に絞ると、彼らに近づいていった。
 ドキドキしながら、彼らの背中に向けて声をかける。
「ねぇ、ナンパしてるの?」
 言うと同時に、ガラの悪そうな兄ちゃんが振り向いた。
「あぁん? だったら何だ?」
 私は彼らにニッコリと笑ってこう言った。
「人数合わないね。私も入れてよ」
 彼らは眉をひそめ、いぶかしげな顔をしながら仲間の顔色をうかがった。
「まぁ……」
 彼らは互いに頷きあいながら答えた。
「いいけどよ。じゃぁ来いや」
 こうして、今夜のドラマは始まった。

 私が連れてこられたのは、ビルの地下にある焼肉屋だ。
 周辺にはラブホテルも多く建てられているので、おそらく酔った後はそこでのお楽しみが待っているのだろう。
「私、ちょっとトイレ行ってくるね」
「あぁ? おーよ。途中でぶっ倒れるなよ。まぁ、倒れても俺らが介抱してあげるけどよぉ〜」
 入って30分程度で、彼らはすっかり出来上がっていた。
 おそらく、ここで私がしばらく姿を消しても大丈夫だろう。
 何気ない顔で戻ってくれば、時間が空きすぎたことにも気づくまい。
 アリバイは完璧だ。
 すでに、彼らのうち1人の携帯電話の番号もゲットしている。
 酔って横にいる女にからんでいる間に、自分の携帯へとかけておいた。
 おそらく着信履歴に番号が残っているはずだ。
 もう、怖れるものは何もない。
 私は大きくそびえ立つレジ机の下を這うように抜け、見つからないように外へ出た。
 ここから先は、誰かに見つかるわけにはいかない。
 私はサングラスをかけ、頭の上に縛り上げていた髪を下ろした。

 同じビルの7階。
 そこでは、秘密のビックリ会食会が行われていた。
「よろしくお願いしますわ」
 トイレで着替えたピンクのドレスに身を包み、招待状を受付に渡す。
 秘密裏で手に入れた招待状である。
 そこにはJapanという文字も書かれていた。
 何の変哲もないこの文字が、重大な意味をもつ。
 受付の人は髪をオールバックにした、狐のような顔の男だった。
 彼は油断ならないいやらしい目つきで、私を見回した。
「お待ちしてました。最高の宴へようこそ」
 にやにやと笑みを浮かべながら、中へと通される。
 絶対、ここで証拠をつかんでやるわ。
 私は決意を新たにしながら、中へと進んだ。
 ワイン。グラス。色とりどりの料理。いかにもリッチ☆なものが白いテーブルの上に並んでいる。
 うまそうだ……。このまま何事もなく、食べるだけであることを祈ろう。

「レディー&ジェントルマン!」
 ステッキを持った黒ずくめの男が叫ぶ。
「今日はビックリ会食会へようこそ!」
 ステッキをクルっと一振り。
 パァっと光が飛び散ったかと思うと、薔薇の花が現れた。
「今宵は、マナーにとらわれず楽しむためのディナーを楽しみましょう」
 パチパチパチ。
 集まった20人くらいの人々が拍手をする。
 私も合わせて拍手をした。
「皆さんは、いつもマナーにとわられて、料理を楽しむという本質を忘れている」
 彼は料理の乗るテーブルを、力いっぱいこちらへ向けて押した。
「それを、今日は思い出しましょう!」
 テーブルは勢いよく、こちらへと滑ってくる。
 そして、ドンと私を含む客のお腹に当たった。
「さぁ、いきますよ!」
 彼はタタっと走ってきた。受付の人もこちらに走ってくる。
 周りにあったはずのドアは突然施錠され、見張りの者がドアの横に立った。
「テーブルにつぶされたら、負けです。刺されても負けですよ!」
 他のスタッフ達も駆け寄り、手には食事用のナイフが握られている。
「さぁ、死なずに料理を食べられるか! 勝負!」
 シャッ。
 ナイフが私の顔の真横を通りぬける。
 私の斜め奥にいた男性の首に突き刺さり、血しぶきがあがった。
「始め!」
 こうして、1人の男性の犠牲と共に、世にも恐ろしい惨劇が始まった。

 わーっ。
 きゃーっ。
 そんな悲鳴が飛び交う中、私は彼らの目的に気づいた。
 私たち客が驚いて落とした荷物を彼らは拾っているのだ。
 ちなみに私は胸に安そうなバックを抱えている。
 きっと、客の中に何千万も持ってきた人がいるに違いない。
 ここで裏取引をするはずだったのだろう。
 私はそれを防いでみせる!
 ……。
 でも、こんなところで無駄に命を落としたくもない。
 ひとまず、警察でも呼びに脱出しよう。
 あちらこちらに飛び散る血しぶき。
 客の荷物に目を配る店の人。主にその目はある青年のでかい荷物に注がれている。
 チャップリンのようなとぼけた顔の青年は、大事そうに大きめのケースを抱えていた。
 あいつらは、あまり私に視線を注いではいない。
 逃げることができそうだ。
 よし、あそこのドアを使おう。あそこなら誰も見張りがいない。
 私は右奥に何気なく移動し、小さなドアに鍵を差し込んだ。
 そう、そこは関係者だけが通れるドアだったのだ。
 なぜか私は関係者以外手にすることのできない鍵をもっていたのだ。
 私は昔ここで働いていた。
 ような気がする。
 記憶喪失者が突然過去の出来事を思い出したかのように、私はよく分からない記憶を取り戻した。
 そうだ! きっと私はここで昔働いていたのだ!
 関係者用のドアを使えば脱出できる!
 いいタイミングで過去を思い出すことができたようだ。
「おい! 誰かが逃げるぞ!」
 どなり声が後ろでする。
 しかし、そんなものに構っている暇はない。
 私は急いで外に出た。
 目の前には、螺旋状にくるくるとおりている階段。
 螺旋階段の間には、一本の棒が1階まで突き抜けている。
 下は真っ暗で、降りたら闇に喰われそうだ。
 でも、殺されるよりはマシだ。
 私は暗い階段を一目散に駆け下りようとした。
「あの女を捕まえろ!」
 バックで、声と共にドアが勢いよく開く音がする。
 やばい。
 私よりも、きっと男たちのが走るのも速い。
 仕方ない。棒をつたって猿のように降りていくしかない。
 私はスゥっと息を吸い込み、階段から足をはなした。
「とぉ!」
 棒に飛び移った。この棒を離すわけにはいかない。
 シュルシュルシュル……。
 私は棒にしっかりと捕まりながら降りていった。
 上の方には私を見おろす男たちの顔が見える。
「あんな小物は、奴が殺してくれる。ほっとけっ」
 上のほうで誰かの声がした。
 その途端、私を見下ろしていた男たちは部屋の中へと入っていった。
 奴って誰さ?


 まだ途中ですが、明後日あたりに続きを書きます。
 

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