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2003年1月2日 「初夢」(2003年1月1日の夜みた夢)

「いちについてぇ〜。よぉ〜いっ」
 友達がふざけた感じでかけ声をあげる。
 これもうまくいかなかったら、どうしよう・・・。
 私は、目の前にある自転車の車輪に祈った。
「どん!」
 友達の声と同時に、私は目の前の車輪に魔法をかける。
 手を触れずに真っ直ぐ進めて、ゴールに着く速さを競うのだ。
 ヨタヨタヨタ・・・。
 車輪は右に左にふらつきながら、のろのろと進む。
 やっぱり、うまくいかないよ・・・。
「うめにょん、がんばれ!」
 友達の励ましに、応えられないだろう自分が情けない。
「う・・・うん! がんばる」
 懸命に、車輪に魔法をかけ続ける。
「こんなの簡単よね〜」
 隣を、嫌味ったらしい女が駆け抜けていく。車輪も迷いなく進んでいる。
 あんな女、大っ嫌い。
 でも・・・。
 私は、あの女にすら負けるんだ・・・。
 すごく自分が惨めだった。
「あ」
 車輪は、ゴールに着く前に、倒れた。

「うめにょんはさ、自分に自信がないからダメなんだよ」
 嫌味な女が、私に助言をしに戻ってきた。
「もっと自信もてばさ、少しはマシになんじゃない?」
 皆よりもダメダメで、あんたよりも劣って、どうして自信をもてる・・・?
 私みたいにできない人がいるから、あんただってエラぶってられるくせに。
 私の精神は、小学生時代に戻っていた。
「う・・・うん。そうかも」
 言い返したって、所詮は負け犬の遠吠え。
 言いなりになるしかない自分なんて、いないほうがいいよ。
「絶対そうだって。次はガンバんなよね」
 腰に手をあてて言いたいだけ言うと、彼女は去っていった。
 助言をしてやったという優越感に浸っているのだろう。
 きっと心の中では、コイツに自信が持てるわけがない、と思ってるに違いない。

 今、どうして私はこんな感情を抱いているのだろう。
 どうして昔と同じようなことを、今また繰り返しているのだろう。
 もっと前向きな人間になったはずなのに。
 こんな自分やだな。
 早く、抜け出したいな。

「今の結果からクラス分けするからなー。張り紙の番号見とけよー」
 先生が大きな声で、皆に呼びかけた。
 そんなぁ・・・。
 きっと、私みたいにできない人のクラスなんて・・・遊んでるっぽい人ばっかだよぉ。
 やだなぁ。あの嫌味な女みたいに頭悪いのがいっぱいいそう。
 とてつもなく暗い私の初夢は、なかなか明るくならない。
 どんどん否定的になっていく自分を感じた。

 次の瞬間。
 私はバスに乗っていた。
 いつものメンバーとは違う。
 もう、クラス分けをされた後だろう。
「あ、うめにょんだ〜」
「あ! ほんとだ!」
 とても懐かしい友人2人が、私を見つけた。
 小学生の頃、適度に仲良かった子たちだ。
 はっきり言って勉強は全くできないけれど、心優しい友人だ。
 あまり他の友人がいない子たちなので、陰で色々言われることもない。
 こんな時は、とても心強い。
「一緒だったんだ! よかった〜、知り合いいないと思ったよ」
 適当に驚いておく。
「うん。一緒で嬉しい〜」
「うめにょんも一緒って、意外だ〜」
 2人がワイワイ騒ぐ。
 友達がいたのは嬉しい。
 でもな・・・。
 私は、この子たちと同じくらいしか、超能力使えないんだ・・・。
 こんなこと思っちゃいけないんだろうけど。
 私って、ほんとに劣ってるんだな・・・。
 とても失礼なことを思いながら、バスの中で2人と「たまちゃん」について語り合った。

 バスが行き着いたのは、またもや白線の引かれた運動場。
 悲しいことに、また超能力を計るらしい。
 もうやめてよ・・・。
「タイムは、誰か友達に計ってもらえよ〜」
 先生が、またまた呼びかける。
 友達に計ってもらう・・・?
 それはつまり。
 2人組をつくれと。
 もし3人組になったら。
 私だけが最後に1人で目立つように計ってもらうハメになる。
 先生って、そーゆーの考えないで色々言うよなぁ。
 だから、世の中からいじめもなくならないんだよ。
 誰かいないかな。
「だが、その前に、自分の荷物を隅のほうに置いてこい〜」
 先生のその言葉に、持ってる自覚もなかった荷物を持って、隅のほうに行く。
 誰か、ペアやってくれそうな人、いないかな。
 そこに、違うクラスの友達の姿が見えた。
「優香〜」
 声をかけてみた。
「あ、うめにょんだ。これから計測?」
 優香の後ろには、見知らぬ女の子が3人いた。
「うん、そうなの〜。超憂鬱〜」
「そっかぁ。がんばってね!」
「がんばるさ! えー・・・っと。友達?」
 私は後ろの3人を見ながら聞く。
「うん。そうだよ!」
 そして優香は、私を3人に紹介した。
「アンジェリーカーのうめにょんだよ」
「ああ! アンジェリーク! 友達がはまってるよ〜」
「そうなんだ!! んふふふふ。アンジェは最高よぉ〜っ」
 そんなこんなで雑談1、2分。
 そろそろ行かなきゃやばいかな、と思い出す。
「じゃぁ、私計測してくるね」
「うん。いってらっしゃ〜い」
 優香と他の3人が暖かく送り出してくれる。
 いいなぁ。友達できて。
 私も、気の合う友達、クラスで欲しいな。

 またもや地獄の計測時間。
 今回は車輪でなく、自分の体を動かす。
 超能力で、飛ぶのである。飛んで、ふよふよとゴールを目指すのだ。
 飛ぶと言っても、地面から60センチくらいのところだけれど。
 結局ペアを組んでくれそうな余ってる人は見つからない。
 ん?
 1人、体操服を着ていない人が他の人のタイムを計っていた。
 きっと、体調が悪いとか、乙女の事情とかで見学なのだろう。
 というか、よく見るとあれは・・・。
 大学の友人、雪ちゃんだな!
 ふっふっふっふ・・・。
 もうたくさんだ!
 こんな昔みたいに嫌な思いをするのは・・・。
 孤独を感じ続けるのは・・・。
 相手の言葉を否定的に受け取るのは・・・。
 もう、たーーーくーーーさーーーーんーーーだーーーーーーーっ!!!
「ゆっきぃぃぃん♪」
 私は彼女の元に駆け寄り、抱きついた。
「おお、うめにょんじゃないかぁ」
「君に会いたかったの! これはきっと運命よ☆」
「うはは。私は別に会いたかなかったがな」
「ああん。ホントは会いたかったく・せ・に♪」
「うーん。まぁ、そういうことにしてやろう」
 だんだんと自分のリズムがとれてきた。
 今はもう、子供じゃない。
 大人なんだよ、諸君!
 精神的に今よりずっと未熟だった昔なんかじゃぁ、ないっ。
「そんなゆっきぃに、頼みごとがあるんだ!」
「ほほう。聞くだけ聞いてやろう」
「タイム計ってぇぇぇ。うめにょんペアいなくて、ちょー寂しいのっ」
「仕方ないなぁ、まったく」

 そんなわけで、私は無事、計測を終わらせることができた。
 なぜか、私は本領発揮をすることができ・・・。
 超能力を使いこなせる優等生になっていた。

「君たちは選ばれた人間である」
 どっかの教祖みたいだ。
「君たちの能力は、生かさなければならない」
 私を洗脳しているのか。
「そこで、今日の任務を与えよう」
 こんな甘ったれたガキに任務与えていいのか?
「これから、君たちはこの、でかい箱に入ってもらう」
 確かにでかい。
 100人くらいなら入れるくらいの、箱が目の前に置いてある。
「そして、飛べと皆で念じるのだ」
 皆の力を合わせてー・・・ってやつか? これって戦隊もの?
「ゴールは近くの公園だ」
 つまんねー。
「だが、これはあくまで練習である。もしうまくいったら、次はアメリカへ飛んでもらう」
 何ですか?貿易センタービルに突っ込むんですか?
「アメリカでの任務は、後ほど伝える」
 何をやらされるのだろう。
「健闘を祈る!」
 ・・・健やかに戦うんですか?

 超能力優等生が20人くらい集まったそこで、先生と思われる人の演説が終わった。
 先生は、少し休憩と言って、どこかへ行ってしまった。
 結局、何がしたいのだろうか。
「なんか・・・こわいね」
「ああ・・・こわいな」
 隣の男の子と言葉を交わす。
 もし何か危ない目にあいそうだったら、守ってもらえるかな。
 とか、よからぬことを考える。
 そのためにも、仲良くなっとこう。
 突然、後ろのほうにいた男の子が声をあげる。
「俺、さっきスパイが何とかって話聞いたぜ。裏んとこでよ」
「スパイ・・・!?」
 私たちの不安がよけい高まる。
「今回は、公園に行くの失敗しとこうか」
「そうだな。そしたら明日も公園ですむかもな」
「その間に、色々探っとこうぜ」
「でも、万が一落っこちて死んだら意味ないよ」
「そもそも、失敗したことないから、どうしたらいいのか分からんな」
「どうしよう・・・」
 皆が口々に不安を口にする。
「ちょっとふらふらしながら行くのはどうだ?」
「それがいいかもしれない。でもどうやって?」
 皆のひそひそ話を注意深く聞く。
「どうやら、ふらふら作戦みたいね」
 隣の男の子にまた話し掛ける。
「ああ、そうだな。でも俺、ふらふらしたことないんだよな。」
 できる人間は、できない気持ちが分からない。
 同じこと、前にも思ったなぁ。
「私、昔ふらふらしてて、1番できないクラスにいたのよ」
「え! そうなの?」
「うん。だから、ふらふらする方法も知ってるわ」
 シー・・・ン。
 突然辺りが静かになる。
 どうやら、皆、私の言葉を待っているようだ。
 できない人間だったっていうのも、悪いことじゃなかったのかな。
「自分に自信が持てずに、他の人の目ばっかり気にしてたのよ」
 まだ、辺りは静かだ。
「だから、自分の任務にスパイにされるかもって疑問をもって、不安な気持ちを高めてやれば、ふらふらするんじゃないかな」
「なるほどな。集中しないようにすればいいわけだ」
「それが、失敗の極意よ」
 なぜか、カッコ悪い。
「よし、それでいこう」
 また、辺りにヒソヒソ声が聞こえるようになる。
「スパイかもスパイかも・・・」
「不安だ不安だ・・・」
 どうやら不安を高めようとしているらしい。

「おーーーっし、用意はいいかーー?」
 先生っぽい人が戻ってきた。
「は〜・・・い」
 皆が答える。当たり前のように、声は暗い。
「おいおい。どうしたんだ?」
「なんでもないです・・・」
 先生は「?」という顔をしながら、まぁいいかと私たちを案内する。
「じゃぁ、そこの入り口から箱に入れよー」
 ぞろぞろぞろ。
 入り終える。
 異様にでかい箱。どっから持ってきたのか。
「入ったなー。じゃぁ、始めー」
 先生の、簡単な合図と共に、私たちは不安を意識しながら、能力を使った。

 ふわふわふわ・・・。
 ゆっくりと箱が上がっていく。
 そして、私は見た。
 広い海を。
 青い海を。
 遠く彼方に広がる。
 空と同化しそうな美しい海。
 太陽の光を浴びて、キラキラと光っている。

 私はその時、強く思ってしまった。
 あそこに行きたい、と。
 あの美しい青の神秘に。
 自分も混じりたい、と。

 ひゅぅぅぅぅーーーーーーーーーん。

「うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 
 すごい勢いで飛ぶ箱。
 箱も、形を崩さんばかりに風にうたれる。
「落ちるぅぅぅぅぅーーーーーーーっ!!!」

「誰だ、変なこと思ったやつーーーーっ!!!」

 必死に箱の側面にしがみつく。
 ごめんなさぃぃーーーーっ。
 私が悪ぅございましたーーーーーっ。うわぁぁぁん!!!
 そんな混乱の中・・・。
 目が覚めた。
 

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