+ 夢小説U−3 +


2003年1月23日 「なんでこんな目に」

 どこだか分からないが、私は修学旅行に来ていた。
 ここは、どっかの田舎の駅だ。
 単なる駅だというのに、はしゃぐ学生たちは写真を撮りあっている。
 なぜか、この修学旅行。ねるとんの役割を兼ねているのだ。
 他の学校の生徒との合同で、グループも相手校の異性と組むのである。
 ゆえに、いつも以上に皆、写真を撮りたがっている。
 しかし・・・。
 私とペアになった人は、もうすでに先に行ってしまった。
 性格も合いそうにない。
 どうやら、相手校の人間は変人が多いらしい。
 寂しい・・・。
 1人ぼんやりと切符売り場へ行く。
 他のまともそうなグループの男を適当に引っ掛けてくるかな・・・。
 周りをキョロキョロ見る。
 あ。
 あの人、私好み・・・。
 私と同じ学校の茶髪の女の子と、一緒にいる男だ。
 髪は金色に近い。染めた感じではないので、もしかしたらハーフかもしれない。瞳も黄金に輝いている。体型はガッチリしていて、筋肉もありそうだ。顔も彫りが深くて、ワイルドでいい感じだ。ダーリンと違って、腹も割れているっぽい。ここがポイントである。
「私ね、グループの人に先行かれちゃって、寂しいの。仲間に入れてもらえないかな?」
 うきうきしながら話し掛けてみた。
「いいですよ」
 思いのほか、私好みの男のほうが答えてくれた。
「あ、じゃぁ記念に一緒に写真撮りた〜い」
 うきうきしながらねだってみる。
「いいよ。じゃぁ、撮ろうか」
 けっこう気前よく応じてくれる。嫌そうにしてたら、すぐに引くべし。嫌そうでなかったらもっと押すべし。これ鉄則。これを守らないと、ただの我侭娘で終わってしまう。
「はい、チ〜ズ☆」
 心得顔で茶髪の女が写真をかまえる。
 きゅvvv
 男は私の肩を抱いて、写真に写ってくれた。
 いける!!
 そう確信した瞬間だった。
 まぁ、3日程度の修学旅行で浮気したって、別にいいよね・・・?
 だって、ほら。ダーリンよりいい男だし。
 いつのまにかいなくなった茶髪女は頭から消えうせ、改めて切符売り場で切符を買うことにした。
「あ・・・あれ・・・?」
 1万円しか持っていないのに、お札を入れる場所がない。
「ど・・・どうしよう・・・」
 すでに周りにいた人全てが電車に乗り終えている。
 ピーっという笛の音。ドアが閉まります、というアナウンス。
 うわぁん。乗れないよぉ。どうしたらいいの・・・?
 プシュー・・・。
 電車のドアが閉まる音がした。
 ええ? 置いてかれちゃうわけ? マジで?
 どうしよう。次に行く場所って私、わかんないよ。
 私の夢の中では、まだ携帯電話が存在していない。どうすることもできずに、切符販売機の前で立ち往生する。
 チャリン。
 突然、横から手が出てきて、目の前の切符販売機にコインが入る。
「一緒に行こう」
 さっきの男が戻ってきてくれたのだ。
 てゆぅか、いつのまにいなくなってんだよ。って突っ込みは夢の中にはない。
「あ・・・あ、ありがとっ」
 私は感激して、男の腕に飛びついた。
 この人に一生ついていくんだ・・・っ。
 そんな気分に一瞬にしてなった。
「どうせだからさ。近道してっか?」
「え?」
 得意そうに笑う彼。
「近道、俺、知ってんだよ」
「そうなんだ! 行く行く〜っ」
 近道ということは、彼と2人っきりで歩く時間が長くなるということ。
 その間に意気投合したりして、いい雰囲気になる作戦でいこう。
 ひっひっひっひ。
 よからぬたくらみをしながら、私は彼についていくことにした。
 
 ほんの少しの凹凸しかない石の壁を登り・・・。
 ものすごい風が吹き荒れる中、人1人しか歩けないような細い堤防を歩き・・・。
 その堤防から落ちて川にぶち落ち・・・。
 ワニに食われそうになりながら、命からがら堤防をよじ登り・・・。
 とうとう私は、越えなければならない高い柵まで辿り付いた。
「あれ、ち〜ちゃん」
 とっても懐かしい呼び方をされる。
「あれ? 何で皆が?」
 イトコたちが勢ぞろいしていた。
「今からこの柵を越えようとしてるんだよ。僕たち手伝うからさ、先行っていいよ」
「ほんとに? ありがと〜っ」
「レディファーストっていうしね」
 心優しいイトコのお陰で、私は柵を渡ることになった。
 イトコが肩を貸してくれ、私はその上に足をかけて柵をよじ登った。
「越えたぞーーーーーーっ」
 叫びながら、柵から飛び降りる。
「先に行ってるぜ!」
 柵の向こうにいるイトコたちに声をかけ、私はまた逃げることにした。
 なんで、逃げるのよ。
 てゆぅか、彼はいったいどこいったのよ。
 そんなことはもう頭にはない。
 近道をするという目的から、目の前にある障害を乗り越えるという目的に変わり、そうやって必死になって走るうちに、目的は何かから逃げることに変わっていた。
 その間に、頭から筋肉ハーフな彼のことはなくなっていた。

 あれ・・・?
 この風景、さっきも見たわ。
 ここは、さっき私がぶち落ちた堤防・・・。
 なぜ?
 もしかして、同じ場所に戻されてしまうトラップがどこかにあったの?
 しばらく走ってから、そのことに気づく。
 あたりを見回すと、さっきも見たような車や、イチャイチャしているカップルも見える。
 やばい・・・。逃げてきたつもりが、戻ってしまうなんて。
 これじゃぁ、追いつかれてしまうわ!
 誰にか分からないが、私は自分の姿を隠すために、川の反対側に下り、森の中に入っていくことにした。
 静まり返った森の中。自分が一歩踏み出すたびに、パキ、と小枝が折れる音がする。
 なんで小枝が・・・。
「君も森の民族を助けようの会の会員かな?」
 突然後ろから話し掛けられる。
「きゃぁぁぁぁっっっ」
 ずざっと逃げてから、後ろを振り返る。
「やぁ。パキパキ音が聞こえてね。ここは、会員じゃないと入っちゃいけないところなんだ。会員じゃないのなら、しかるべき罰は受けてもらうけど・・・」
 銀色の髪をした若い男が冷たい目でこちらを見る。
「えっと・・・。会員になりたくて来たんです」
 適当なことを言っておく。民族を助ける会なら、別に悪いことではないだろう。少しの間会員になってやめればいいのだ。
「ほう。なるほどね。じゃぁ、こっちへ来てくれ。君を歓迎しよう」
 何だかややこしいことになったな・・・。
 私は先行き不安になりながら、相手についていった。

「今日から、君にはここで暮らしてもらう」
「・・・」
「他の会員もここで暮らしている。楽しい共同生活だ」
 いや、楽しくないです。それ。
「この家は、僕らが自分たちで作った家だ。すきま風や雨が振り込むこともあるけど、それはそれで面白いよ」
 面白くないっちゅーの。
 そこは、明らかに木で作りましたーっという家だった。
 隙間があきまくっている。
 これなら、まだ竪穴住居のがマシかもしれない。
「君の部屋は2階だから、荷物を置いてくるといい」
「は・・・はい・・・」
 傾きかけているドアをギィ、とあける。
 おーまいがっ。
 電気が、まず存在しない。
 薄暗い部屋の中、木と木の隙間から光が外から漏れている。
 二階って言ってたよな・・・。
 すぐ右手に、ぼろっちぃハシゴがあった。もちろん、木でできている。
 これ、私が乗ったら崩れ落ちるんじゃ・・・?
 不安になりながら、ハシゴを登る。
 ギシッ、ギシィッ・・・。
 こわいよぉ・・・。
 ようやく登りきる。
「こ、こんにちは〜」
 突然話し掛けられる。
 よく分からん男が1人と、女が2人、こちらを見ていた。
 髪はボサボサで、すり鉢で何かをゴロゴロと混ぜている。
「こんにちは〜」
 とりあえず、引きつった笑顔で挨拶をしておく。
 これはやばい・・・。今日中に何とかして逃げ出さなくては・・・。
 危機感を感じながら尋ねてみる。
「あの、私の部屋はどこでしょう?」
「あそこ」
 女が部屋の端のほうを指差した。
「布をぶら下げて、部屋を分けてるのよ」
 もう1人の女が説明する。
 耐えられん・・・。
 耐えられないわ・・・っ。
「やぁ、皆」
 さっきの銀髪の男が2階へ上がってきた。
「新しい会員の子とはうまくいきそうかな?」
 ・・・。
 沈黙。
「まぁ、これから親睦を深めてくれたまえ。それはそうと、我が会員の美知枝さんが作ってくれた薬草が、森の住民権兵衛さんによく効いたそうだ」
 パチパチパチ。
 皆が手を叩く。
「そのお礼として、おにぎりを20個も頂いた!」
「お〜」
「それはありがたい」
「嬉しいことだ」
 口々に会員がありがたがる。
「ここに、2階の会員5人分のおにぎりを置いておく。出かけている鉢丸の分もちゃんと残しておくように」
 そう言うと、銀髪の男は下へと下りていった。
 同じ階にいる会員は、おにぎりをそれぞれ掴み取ると、美味しそうに頬張った。
「いやぁ、よかことをすると、お礼も美味しいべさ〜」
「んだんだ〜」
 ふふふふふ・・・。
 たとえ、人の役に立とうと・・・。
 報酬もおにぎりで・・・。
 しかも地味・・・。
 こんな世界絶対嫌〜〜〜っ。
 私は立ち上がり、取ってつけたような木の窓をギィとあける。
「誰ーーかーーーたーーーーすーーーーけーーーーーろーーーーーぉぉぉ!!!」

「ふーはーはーはーはー」
 叫ぶと同時に、ターザンのようにビシュンッと変な男が飛んできた。
「やぁ、君。お困りのようだねぇ」
 頭もビシっと固めて、スーツもカッコよく決めて、キラリと真っ白な歯を光らせた。
「困ってるってもんじゃないわよっ」
「そうだろうねぇ。こんなところでレディが暮らすものではないね」
 変な男の言葉に、うんうんと私も頷く。
「よぉし。じゃぁ、君のために素敵な家を用意しよう。さぁ、私につかまって」
 変な男が私に手を出す。
 ここから逃げられるなら・・・っ。背に腹は変えられん!
 私は彼の手を握り返した。
「私の名は袋小路金篤。覚えておくがいい」
 どっかで聞いたような名だな、と思う間もなく、彼は私の体を抱きかかえ、あ〜ああ〜とターザンのようにどっかから垂れている紐にぶら下がって、一緒に飛んだ。
 ・・・・・・っ。
 恐怖に声もでない。ぎゅっと目をつむる。顔面にすごい風。
 早く終わってよ〜〜。
「着いたよ。お嬢さん」
「わぁ・・・っ」
 シュタっと、大きな窓から部屋に入る。
 さっきとは打って変わって、ゴージャスな家だった。
 天井にはシャンデリア。
 コテコテに装飾された鏡や時計。
 全て、金色にキラキラ輝いている。
「すごい・・・」
 ベッドも天蓋つきベッドで、周りにある4つの柱にはラメの入った赤のカーテンがつけられている。
「美しいわ・・・」
「全て君たのために用意したのさ、姫」
「嬉しい・・・っ」
「私はこれから仕事があるんだ。ここでゆるりと疲れを癒すといい」
「ありがとう・・・っ」
 夢見ごこちに、部屋中を探検する。
 白いレースのついたカーテンをあけ、窓の外を眺めると、そこには美しい庭園があった。
遠くには町が見える。
 まるでお城だわ・・・っ。
「姫〜♪ 私は姫〜♪」
 歌いながら、風呂場も見てみる。
「すごっ!」
 石柱に囲まれたリッチな風呂の壁には、金色のライオンと白いライオンが取り付けられ、それぞれお湯と白い泡が出ていた。
「クレオパトラっぽい・・・」
 これはぜひ入ってみなくては、と、ホイホイっと服を脱いだ。
「あわあわお風呂〜♪ らんららららら〜♪」
 私は、幸せの絶頂にいた。

「パトラ♪ パトラ♪ クレオパトラ♪」
 歌いながら風呂を出る。バスタイルを巻き、着替えを探そうと風呂場を出た時だった。
「おお、もう出たのか」
「うげぇ!」
 バスタイルを握る手に力がこもる。
「ちょっと、どうしてここにいるのよ!?」
「何言ってるんだ。君は私から家を借りるだけだ。ここは私の家なんだぞ?」
「な・・・何しに来たのよ。仕事じゃないわけ?」
「いや、メガネを忘れてな・・・」
 そう言って、机の上にあったメガネを手にとると、こちらを見る。
「今日は少し遅くなるが・・・。必ず帰ってくる。そこのベッドで横になり、待っているといい」
 そう言って、ニヤリと笑うと、その袋小路金篤とやらは去っていった。
 ・・・一緒に寝るってこと?
 私を最初から手篭めにするつもりだったのね・・・?
 そりゃそうよね。やっぱり見返りがなければ、家なんてくれないわよね。
 ようやく現実に気づき、逃げることにした。
 ガチャガチャッ・・・。
 ドアが開かない。
 ガチャガチャガチャ・・・ドカァ!!
 体当たりをしても開かない。
 ・・・。
 どうやら、閉じ込められたようである。
「おい」
 ドカァ!
 突然ドアが開いて、額をぶつけた。
「いたぁ・・・っ」
「逃げようとは考えないことだ。深刻な結果になるぞ・・・?」
 どっかの大統領のようなことを言う。
「ちぃ」
「まぁ、ここから逃げることなんて不可能だがな」
「ちぃ」
「では、夜会おう。楽しみにしていよう」
「ちぃーーっ」
 いつのまにか、「ちょびっツ」のちぃになっていた。
 訴えようにも、「ちぃ」しかしゃべれない・・・。
 いったい、ここからどうやって逃げればいいの・・・?
 さっきとは打って変わって窓の外を眺め、憂鬱な気分になる。
 ここは地上から高い。マンションで言えば5階くらいだろう。
 逃げられるわけがない・・・。
「お〜い」
 突然下から声が聞こえてきた。
 助けてもらえるかもしれない!
「ちぃ〜っ」
 ちぃじゃダメだっつの。
「俺は森の民族を助けようの会の鉢丸だ〜っ。君も会員にならないか〜?」
 なにぃ!!
 ど・・・どうしたらいいんだ・・・。
 袋小路に手篭めにされ、自由のない世界だけれど豪華な部屋か・・・。
 会員になり、森で暮らしつつも、何かおかしい方向性で人々の役に立つか・・・。
 どうすればいいのだ・・・。
 早くしなければ、鉢丸とやらが行ってしまう・・・。
 よし。
 ここから出るのだけ手伝ってもらい、何とかして森からは逃げよう大作戦でいこう。
「ちぃ〜っ」
 叫びながら、うんうんと頷く。
「おっしゃーっ。じゃぁ、おりてこ〜い」
 どうやってだよ。
「ちぃ〜っ」
 私は、相手が受け止めてくれることを期待し、窓に足をかけた。
「おっ、おいっ! そこから落ちる気か〜っ?」
「ちぃ〜っ」
「おっおい! 俺の手折れる・・・え? マジ? うわぁーーーーっ」
「ちぃ〜〜〜〜っ」
 
 今日もまた、落ちる場面になって・・・。
 目が覚めた。
 毎日、どうして夢の中でこんなにパワフルに動きまわっているのか。
 たまにはのんびりさせてくれよ、と思う今日この頃である。


 

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