+ 魔女 +
魔女のお話を簡単に・・・。
魔女ってどうやって生まれたんだと思う? それはね、たぶん、「おたすけおばさん」からだと思うんだ。 昔は今ほど裕福じゃなくて、薬もあんまりないし、高いし。 赤ちゃんが生まれても丈夫に育つとは限らなかったの。 だからね、お願いしたの。 冬の間死んだように見えるのに、春になると生き返る草や木にね。 力をくださいーって。 大切な子供や家族を助けたいのーって。 |
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そしたらね、力を本当に貸してくれたんだよ。 草を食べたり、葉っぱをお茶にしているうちに、薬になるものを見つけたの! 体にいい食べ物や、病気の傷みをやわらげてくれる食べ物。 そ〜ゆ〜ものが、分かってきたんだ。 そしてね、それを見つけた魔女さんは、お医者さんの役目も果たすようになったんだよ。 他にも、女の人の体のこともよく知ってるから、お産に立ち会ったり相談にのったり。 そんな「おたすけおばさん」が、だんだん魔女と呼ばれるようになったんだと思うな。 魔女と呼ばれる前には、巫女さんだったみたいだよ。 魔女のルーツは紀元前2000年頃に信仰されていた地母神に使えた巫女さんだったらしいの。 さっき言った通り、その巫女さんたちは、疫病を鎮めて、病気を治して、産婆さんの役割も果たしたんだって。 他にも、狩りの成功や畑の豊作を願ったり、未来も予見したりしちゃったらしいよ! そして、だんだんと魔女って言われるようになったんだね〜。 魔法みたいな力で皆を幸せにしてくれる女の人♪ |
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でも、だからって皆に好かれたわけじゃなかったんだ。 神様は1人しかいないって思ってたキリスト教の人たちにとって、その考えは邪魔だったの。 地母神なんかいないよ!って。 きっと地母神に使える者も悪魔だ!って。 魔女は草や木から力を借りていて、草や木にも神様が宿っているって思ってた。 そんな考えを持っている魔女が、許せなかったの。 災害や病気で人がいっぱい死ぬと、不思議な力を持つ魔女のしわざ!って言う人まで現れちゃってね・・・。 魔女はとっても迫害されたんだ。 水に沈められたり、火あぶりにあったり・・・。 たくさんの人が殺されたよ。 |
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どうしてそんなにひどいことが行われたかって言うとね・・・。 社会が不安定だったこともあるんだ。 ヨーロッパではね、封建社会は崩壊するし、教会の権威も弱まるし。 教会大分裂の時代だったの。 十字軍が遠征に出かけて、外から違う文化が入ったから社会も変化したし。 ペスト(黒死病)も流行して、たくさんの人が死んで。 百年戦争の下で、農民もたくさん一揆を起こして。 すごく不安定だったんだよ。 |
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だから皆、パニックになってね。 不安を打ち消そうと、魔女を探して殺すってことを繰り返したの。 魔女じゃない人まで、魔女に仕立て上げて殺すことも、しょっちゅうだったんだよ。 悲しいね・・・。 百年戦争(百年も続いたの)を終わりへと導いた、ジャンヌ・ダルクも火あぶりにされたよ。 フランスを救ったのにね。 ただ、よく彼女は魔女と疑われて火あぶりにされたって言われてるけど、違うんだ。 ちょっと誤解が多いから今言っておくよ。 彼女は異端として処刑されたの。 彼女を魔女として仕立てあげようとした意図はあったものの、魔女だと証明できなかったの。 それくらいに、ジャンヌ・ダルクは賢明で意思が固い、素晴らしい人間だったんだよ。 でも異端とされてしまったから・・・。 牢屋の中で暴行や虐待を受け、19歳で、火あぶりにされて、死んでしまったの・・・。 この話は、今度、機会があったらするね。 |
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今では、魔女のお祭りが残っているよ。 例えばね、ドイツの西のほうに、ファスナハトっていうお祭りがあるんだ。 2月の末だよ。 キリスト教徒は復活祭りの前の40日間を四旬節と呼んでね、その間はイエスの受難と十字架上の死をしのんで、質素に暮らすの。 だから、その前の1週間は、楽しいこととはお別れってことで大騒ぎして遊んじゃうんだ! これがファスナハトってお祭りだよ! カーニバルって呼ぶところもあるね。 でも、もう1つの意味もあるよ。 冷たい冬が終わって、春を迎える喜びのお祭り! どっちにしても、楽しそうだね♪ この時に、仮面の魔女たちが練り歩くんだよ〜。 長いほうきを右や左に大きく動かしたり、乳母車に子供を乗せて走りまわったりね。 夜になると、まきに火がつけられるよ。 その上を魔女が飛ぶんだ! ほうきの柄を、棒高跳びの棒みたいにして飛び上がるんだよ。 たき火のこっちが冬。あっちが春。 火を飛びこすことで、魔女たちは春を運んできてくれるんだって♪ |
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ドイツの北のハルツ地方にも、4月30日にワルプルギスの祭りがあるよ! 魔女料理や、魔女のお化粧屋さんも屋台に並ぶよ。 魔女ゲームもあってね。それが上手くできると、「ほうき運転免許証」がもらえちゃうよ☆ でも、このお祭りでは、魔女は冬の役割を持っているの。 舞台で、永遠に冬であることを望む悪魔が退散すると、魔女も持っていたほうきを火の中に入れて、冬が過ぎたことを示すんだ。 ファスナハトでは冬から春への橋渡しをしてたのに、ワルプルギスでは魔女は冬と同じになっちゃうんだね。 魔女ってあちこちで意味が変わってくるんだ〜。 でも、ワルプルギスってキリスト教の聖女の名前だったんだよ。 聖女のお祭りは魔女のお祭り。 なんだか不思議だね! 冬がなければ春もない。 そ〜ゆ〜ことかな。 |
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ベルギーのイーペルって町では、3年に1度、「猫祭り」があるよ。 5月の第二日曜日だね。 ここでは昔、たくさんの猫を飼っていたの。 毛織物が盛んだったから、毛織物をかじるネズミを退治するネコを飼う必要があったんだよ! でも・・・その頃は魔女の迫害の時代。 「あの町には猫が多い。猫たちが魔女と一緒になって金を作っているんじゃないか」 と疑われちゃってね。噂を消すために、高い塔の上から生きた猫を投げたんだ。 それが猫祭りの始まり。 今ではぬいぐるみを投げているよ。 夜には「魔女裁判」が始まるの。 「お前は魔術をつかって、牛の乳をくさらせたな」 「私は魔女ではありません」 「だまれ、お前の罪は明らかだ。よって火あぶりの刑にする」 そうして、お祭りの日の真夜中には、魔女の人形が火に投げ込まれるよ。 魔女の火刑だね・・・。 昔ここでは一番多くの魔女が焼かれたらしいの。 二度とそんなこと、あってはならないよね。 このお祭りのたびに、皆そう思うんじゃないかな。 |
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今でも、まだ魔女はいるんだよ。ルーマニアにも住んでるんだ。 飛べないんだけどね。 でも、薬草の知識いっぱいだよ。 マトゥラグーナを探したりもするよ。 マトゥラグーナは有名だから知ってる人も多いかな? 根が女の人の体をしているって言われていてね、抜くときにキャーって悲鳴が聞こえるの。 お金もたまるし、病気もなおすし、いいことばっかりのすっごい草だよ! いつか私も、魔女さんに会いに行きたいな♪ それでね、マトゥラグーナの葉っぱを1枚、もらってくるんだ♪ |
<参照>
1)角野栄子著.下田智美画.新魔女図鑑.東京.ブロンズ新社,2000,71p.(ISBN 4-89309-210-3)
2)角野栄子著.みやこうせい写真.魔女に会った.東京.福音館書店,1998,40p.(ISBN 4-83401-1521-1)
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