+ 壁の花 パンの耳 +




  1.ビューティからの招待状


 はぁい。
 僕の名前はビューテイ。
 愛を届けにやってきたんだ。
 ねぇ、君は幸せになりたい?
 幸せってなんだろね。
 でもかみしめてみたいよね。
 おいで、一緒に夢を見よう。
 こんな寂しくって切ない世の中逃げ出してしまおう。
 こんな哀しくって辛い世の中、忘れておしまい。
 大丈夫、僕がついてる。
 僕が側にいるから。
 僕が、君にステキな夢を見せてあげるよ。
 ねえ、どんな世界に行きたい?
 どんな世界で生を受けたい?
 どんな世界なら幸せになれる?
 そんなとこ、本当にある?
 魔法が使える世界なんてどうかな。
 行ってみたい?
 それはね、ここだよ。僕のいるところ。
 ちょっと、ため息つかないでよね。ホントのことなんだからさ。
 そう、ここでは夢のような魔法を使うことができるんだ。
 でも、残念ながら幸せじゃないよ。
 何でか分かる?
 それはね、誰もが当たり前だと思っているからなんだ。
 ベタな理由だろ?
 時にそれは殺戮のための刃物となって、人を死へと突き落とし。
 時にそれは欲望のための麻薬となって、人を堕落へと導く。
 そんな所、こことそう違いはないよ。
 つまらない世界だ。
 少なくとも僕はそう思うな。
 魔法は君の心を救わない。
 肝心なことは何も教えない。
 どこでも一緒さ。
 でも、まぁ面白いこともあるよ。
 うん、君は神がいると思う?
 神はいるのさ。実体はないけどね。
 信じられない?
 じゃぁ、神とは何かな。
 人があらがえないもの。人がどうやってもかなわないもの。そう定義すると何だと思う?
 答えは、時間さ。
 誰だって時を過ごすハメになるし、老いを逃れることもできない。
 偶然、必然、運命、宿命・・・・。
 そんな時間に支配されて人は生きているんだ。
 たとえ人が滅んでも時は刻まれる。
 宇宙もきっと膨張していくだろうね。
 人が夢見て、人が辿りつけない「永遠」・・・・それが時というものさ。
 ただ、こっちの世界では神に選ばれた聖人は肉体の衰えることもなく何百年も長生きすることができるんだ。神そのものである時を多く過ごした人間の一生は非日常に彩られているよ。神の力を借りて時間を超えることもできるしね。
 その破天荒な人生、ちょっと垣間見てみない?
 ん?意外?
 でもさ、同じとこにずっといるよりかはちょっとは、マシな暇つぶしができると思うんだ。つまんない世界だけどさ。
 だから、僕はここで君を待ってる。
 幸せと一緒に君を待ってるよ。
 魔法は君を幸せにしないけど、僕はするかもしれない。
 僕がしなくても、君が見つけるかもしれない。
 きっとそれは、君の世界と同じものだよ。
 僕の名前はビューティ。
 一介の神の下僕であり、犠牲者だ。
 さあ、僕たちのつまらない茶番劇に君を招待しよう。
 一緒にこの世界で歌って踊ろうじゃないか。
 大丈夫。僕がエスコートしてあげるから。
 ね?おいでよ。
 ほら、聞こえるでしょ?
 僕以外にもたくさんのものが君を呼んでる。
 おいで、一緒に夢を見よう。
 一緒に・・・・ね?
  
       2へススム   


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