Air

<Airの解釈と感想>

霧島佳乃〕 〔遠野美凪〕 〔神尾観鈴 〕 〔国崎往人〕〔全体


・ 神尾観鈴 2 ・



柳也は、天からつかわされたという翼人である神奈を守護するために、やってきた。
神奈は今まで、敬われて育っていたので、きやすく接する柳也に惹かれた。
侍女の裏葉もそれを嬉しく思っていた。
しかし、北の社に神奈は移されることになった。
神奈は仕方ない、と諦め、「おぬしがおらずとも、余は生きてゆける」と言う。
柳也と裏葉は神奈と離れたくなかったし、神奈は母親に会いたいと思っていたので、
柳也の言葉により、3人は脱出する。

ここは、友達がいなくても1人で生きてきたが、往人と友達になろうとする観鈴を彷彿とさせます。
やっぱり1人って寂しいですよね。
神奈はお母さんの記憶もないんですから。
神奈がお母さんの記憶を全く持っていなかったのは、最後の翼人であろうとした母親が神奈の記憶を封じたからかもしれません。
だからこそ、エア編で観鈴は大切な人の記憶を、お母さんのことも忘れるのかもしれません。
人間の身に記憶が入りすぎて、以前の記憶がなくなったからとも言えますが。
また、神奈は母親から記憶を受け継いだ時に翼を使う方法も知ります。翼人は夢を継ぐ者ですから、受け継ぐと同時に母親の記憶も戻ったんじゃないかなと思います。
エア編で、観鈴が最後の最後に、往人のことも全て思い出したのはそのせいでしょう。
全てを受け継いだ時に、忘れていたことも思いだすと。
また、人に翼人の記憶は普通入りきらないので、夢に記憶が入ってくるだけでなく、現実でも同じようなことが起きていくのだと思います。
往人(柳也)との出会い、本当の母親の記憶がないこと、友達がいなかったこと、往人(柳也)と友達になったこと、往人(柳也)が病んでいったこと。呪いの受け継ぎ。などなどです。

神奈たちは追手から逃げながら、結界を越え、母親の元に辿り着いた。
だが、母親には呪いがかけられており、触れると移るというものだった。
しかし神奈は、母親が矢に射られた時に触ってしまう。
母親は神奈に記憶を受け継がせ、亡くなった。
神奈は2人に言う。
「余の最後の命である。末永く。幸せに。暮らすのだぞ・・・」
神奈は柳也と裏葉を助けるため、翼を広げ、空へ上がる。
僧兵は恐れ、封印の術を神奈にほどこす

結果的に神奈の願いは叶う。
裏葉は神奈の声を聞き、それによって柳也も生きる希望をもつ。
裏葉は法術を習い、いつの日か神奈の輪廻した者に会えるよう柳也と子供をつくる。
柳也が病んでいたので、「私1人が残されるなんてあまりに酷な仕打ち」と言い、説得したのです。

神奈がかけられた呪いは3つです。
1つは、神奈の魂を空に捕らえる呪いです。
この呪いは、いつか朽ちる日が来るとあります。そして魂は地上に戻り、輪廻を繰りかえすとあります。
これは、術をかけた人もいずれ死んでしまうし、神奈も空に拘束される呪いをかけられていると知らないからじゃないでしょうか。
なにせ、心を打ち砕かれて、柳也が死ぬところを見せられたりしてるのですから。空に拘束されていることには気づかないのでは、と。
呪いは朽ちて、すでに輪廻してますから、この呪いはもう問題ないです。

2つ目は、「翼人に心を寄せる者を弱らせ、やがては死に至らしめる」というものです。
しかし、柳也は死ぬまで3年。往人はほとんど動けなくなるまであっという間です。
しかも、柳也は神奈とは離れているのに弱り、往人は観鈴から離れたら良くなってます。
極めつけに、晴子は弱ってもいません。
どうしてかと言うと・・・。
「人に掛けられた呪いは、いずれ解ける。翼人である神奈に掛けられた呪いは、解けない」
という言葉があります。
これは、翼人が夢を継ぐ者だからです。
「おそらく夢とは記憶のことを指す。翼人はなんらかの手段によって、子孫に記憶を引き継がせた」
と柳也が言っています。
つまり、翼人が呪いをかけられたことを覚えていて、忘れることができないから解けないのだと思います。
人間なら忘れることができる。が、翼人は記憶し続ける。
平たく言えば、翼人の自己暗示が現実になるのだと思います。
法術とはそもそも翼人が人に教えた1つの知恵です。
法術は人の心を読むことや幻を見せること、触れることなく物を動かしたり、病を癒したり、見聞きしたことを忘れさせたり死者の魂を呼ぶこともできます。
これも翼人の力の1つでしかないのです。
翼人が自分に対して呪いをかけてしまうことも簡単にできるはずです。
ですから、母親から記憶を受け継いだ神奈は、呪いも自分の記憶として受け継ぐ。そして柳也は死に至る。
しかし、観鈴には夢として記憶が入ってきているので、呪いがどういったものか自覚していません。
本当なら、心を寄せる者も弱ることはないはずです。
ただ、往人は「心を寄せる者が弱り、死に至る」ことを母親から聞いています。
しかも翼人の力の一部である法術を持っています。
その力が発動して、弱っていくという母の言葉通りのことが起きてしまいます。 
ここで、観鈴が「心を寄せる者は、それだけで否応なく弱る」と思えば、観鈴の自己暗示により晴子も弱ったと思います。
しかし、観鈴は「夢の話を詳しくしたら相手が弱る」と思いこみます。
観鈴の自己暗示により、夢の話をあまりしなかった晴子は弱らなかったのです。
ですから、この呪いも往人一族でなければ、何の問題もありません。
そうすると、観鈴がなぜ癇癪をもっていたのかということになりますが・・・。
これは1人でいなければならない理由にはなりません(神尾観鈴1参照)。
癇癪を持つ観鈴と往人は友達になりましたし。それでも友達でいてくれるって人が現れてもおかしくないです。
往人を避けたように、観鈴が勝手に離れていくのです。
極端な話、躁鬱病の人もお酒を飲むと暴れる人も友達っているはずですしね(^^;
「自分のせいで柳也が死んだ」という悲しい神奈の記憶を受け継ぐために、現実でも「誰とも友達にならなければいい」という無意識の思いが発動するのでしょう。これが3つ目の呪いです。

3つ目の呪いは、今上記にあげた通り、神奈の心を打ち砕く呪いです。
柳也が死んでしまう場面を見て、泣き続けているのです。
上の2つの呪いは書いた通り、もう問題はなくなっていますが、これだけは残ります。
空の少女はこの悲しい記憶を見続けなければなりません。
「誰とも友達にならなければいい」と思いやすくもなります。
これを救う方法は、柳也と裏葉の子孫が今幸せに暮らしてるという記憶に塗りかえることでしょう。
それを、佳乃編でも、美凪編でもすることができました(神尾観鈴1参照)。
エア編でも、そらを通してすることができました。
1000年に渡る呪いは解けたのです。
呪いは解けました。しかし・・・。

呪いではありませんが、翼人の特性ゆえに「子孫に記憶を引き継がせる」必要があります。
そして、地上に降りた神奈の魂は人間に宿ることができず、神奈の魂は癒される間もなく輪廻に戻ります。
「小さな器に海の水をうつすようなもの」なのです。
「注ぎ終わるより早く、器は割れてしまう」ということで、空の少女は大人になれず散っていきます。
これも1つの呪いと言えるかもしれません。
この解決として2つ考えられます。
1つは、観鈴が記憶を全て見て、記憶の引継ぎが終わったこと。
今までは記憶が受け継がれず、翼人並の記憶が漏れていたが、観鈴によって完全に「膨大な記憶を持った人間」が完成した。
記憶も体も人間となったことにより、次の転生では翼人の特性である記憶の引継ぎが行われない。
こっちがセオリーかな、と思います。

2つ目の解釈は・・・かなり邪道です。
1つ目の解釈の補強みたいな感じですが。
観鈴は今まで夢を見てきたわけではなく、往人と会った夏から空の夢を見ているんですよね。
そして、自分が空の少女と確信してからは急激に過去の夢を色々見てるんですよね。
たった1人でこの夢を見て、1人で弱っていくということは過去にもない。
往人一族がスイッチを押してる感じです。
大人になれずに死んでしまうと思っていて、そう伝えてるのは往人一族ですから。
往人一族が空の少女に会わなければ、早く死ぬことないんじゃない?とか思ったり。
夢を見たとしても、寿命がくるまで生きてるんじゃない?と思ったり。
往人の空の少女の話を聞いて自己暗示という力でどんどん思い出していくわけで。
思い出しすぎて翼が痛くなって弱っていくのではないでしょうか。
思い出したいって思うのも、親しくなった往人に側にいてほしいのだから当然ですし。
今までの空の少女たちも、仲良くなった往人の先祖たちに一緒にいてほしいと思ったでしょうし。
そうすると、佳乃編と美凪編でトゥルーエンドを迎えても、観鈴は早く死ぬことはないんじゃないかと。
「誰とも友達にならなければいい」と思いやすくなるのと、翼人の使命をまっとうできないだけだと。
そう思います。

ただ・・・神奈には柳也と幸せになって欲しかったなぁ、という思いがあります。
例え魂が救われたとしても、母親に会えたとしても、1人じゃなくなったとしても、やっぱり悲しいです。
大好きな人と家族をつくる幸せを味わってほしかったです。
それは観鈴もそうです。
若くして死んでしまうっていうのは、それまでにどんな幸せがあったとしても、悲しいことです。
貴重な命を思う存分使いきっていきたいです。


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