Air

<Airの解釈と感想>

霧島佳乃〕 〔遠野美凪〕 〔神尾観鈴 〕 〔国崎往人〕 〔全体


・ 神尾観鈴 3 ・



まずは解釈からいきます。

足が動かなくなった観鈴。
これは、神奈を逃がさないためにと、人間がかけた1つの呪いが現れたのかもしれません。
もしくは、記憶が人間の器に入りきらないので、痛みが足にいっただけかもしれません。
または、神奈が海を見ることもできずに空に留まってしまったゆえに、足が使えないという状況の現実での記憶の引き継ぎが行われたのかもしれません。
それが一番可能性あるかな、と思います。
夢だけでなく現実でも記憶(思い)を受け継ぐということで、受け継ぎ最終段階にあたって、知ることのできなかった神奈の痛みを知る必要があったのではないでしょうか。
翼が痛くなったのも、翼を矢で最後に射たれた痛みを受け継いだのかもしれません。
翼は記憶を司るので、見えない翼にいっぱいっぱいに記憶がつまってったからかもしれません。
どっちかでしょう。

記憶を失ったのは、神奈が母親から幼い頃の記憶を封じられたからでは?と言いましたが、
もう1つの可能性として、あまりの記憶の膨大さに昔の記憶を保持できなくなったからとも言えます。
これも、どっちかでしょう。
往人によって記憶の容量を増やしてもらっても、翼人の記憶は膨大ですから。

往人の幸せを届けることが空の少女を救うと言いましたが、それでも記憶の引継ぎだけは残ります。
往人という引き金がない場合、記憶はずっと空を彷徨うでしょう。
最後の翼人は幸せな記憶を星に差し出すのが使命。
記憶の引継ぎという使命をまっとうし、死によって空へ返す。
そして、往人の記憶もそらが空へ持っていく。
観鈴にとって最高の1000年の悲劇からの解放です。

こっから感想モードに入ります。

往人の最後の願い。「側にいて笑わせたい」この願いの1つ「側にいる」ということは叶いました。
カラスとなって観鈴と友達になったからです。
でも、エア編でずーーっと無力を感じます。
往人といると笑顔になる観鈴。
人じゃないそらにはそれができない。
とっても悲しいです。そらと同じように、往人には嫉妬はしません。
ちょっと前まで自分でしたから(笑)
でも、無力を感じます。

ただそのお陰で晴子の本音を聞くことができます。
そこで観鈴のことも、もうちょい分かりました。
晴子の姉が駆け落ち同然で産んだ娘、それが観鈴。
姉は死んでしまい、男は晴子に観鈴を押し付けた。
いつかこの子をあの男が連れてってくれると信じて暮らしていたが、いつのまにか観鈴を好きになっていた。
そして、男が連れて帰る日を恐れていた。
その時に惨めになりたくなくて、誕生日にプレゼントもあげなかった。
「もう、怯えたくない」
「あの子と生きるんや」
と、橘の家に行き、家の前で10日間土下座をする。

温泉に出かけたかと思いきや、行った場所は橘の家でした。
びっくりです。
この行動の引き金は往人の言葉でした。
往人の思いが引き継がれたと言ってもいいかもしれません。
一緒にいたい。観鈴の笑顔をずっと見ていたい。
それは往人が願ったことと一緒です。
そらと思いを同じにしながら、そらにできないことをしていく。
感動しながらも、そら(自分)の無力感をとっても味わいます。
せめて晴子に側にいてあげててほしい。そう強く願う始まりでした。

ずっと、自分(往人)がしてきたことを、そらを通して客観的に見ることになります。
最後を知っているので、最初は往人にもっと優しくしろっと言いたくなります。
でも、言葉を話すこともできない。
運命を止めることもできない。
悲しくて切なくてやるせないです。
確定してしまった過去は、変えることができない。
現実の非情さを見せつけられます。
なんでこんなもの見せつけるんだ、という気分になります。
往人も消えてしまった時。
「また失うのか」
「運命は変えられないのか」
と、悲しみでいっぱいになります。

そらは往人がいなくなったことで往人だったころの記憶を取り戻します。
「彼女と一緒にいられるのは俺だけで・・・」
「俺だけを見てくれて、生きてくれる。それが俺が見つけた幸せで・・・」
「そんな日常の中に生きていけるはずだった」
この思いは、往人だからこそ持てたものでしょう。
救いたいという願いではなく、一緒にいたいという強い願い。
「俺に笑いかけてほしい。俺を見つめてほしい。俺をあの日のようにかけがえのない存在として認めてほしい」
男女だったからこそ、恋愛という愛だったからこそ持てた感情だと思います。
「なのにどうして俺は・・・」
「こんな姿でいるのだろう・・・」
「彼女をまた笑わせるはずだったのに・・・」
「俺だけを見てくれる彼女を笑わせるはずだったのに・・・」
「なのにこんな無力な姿で・・・」
「ただ、彼女の近くにいるだけの存在・・・」
とっても泣けてきます。
観鈴を抱く腕もない。思いを伝える言葉も持たない。
愛を伝えたいのに、伝える方法がない。それほど悲しいことってないです。
Airはあちらこちらで自分の無力感を感じる場面がたくさんあります。
ここは特にそうです。
せめて気づいてほしい。でも自分はカラス。そんなの絶対嫌です。

そこで人形を見つけ、観鈴の前で動かします。
「あの日は笑わせることができなかったけど・・・」
「でも、今度こそは」
「今度こそは笑わせるから」
ここで往人の2つ目の願いが叶います。
観鈴は笑いました。
往人はそらとなって、観鈴を笑わせることができました。
そらは人形を動かし続け、観鈴との暮らしを1つずつ思いだし、忘れていきました。
カラスの体に人間の記憶は入りきらないのです。
そらが往人の記憶を翼人のように受け継ぐことができたのは、法術を使えたからでしょう。
法術は翼人の力の1つです。
記憶の受け継ぎも強く望めばできたのでしょう。
そらは言います。
「人であった時の記憶を忘れて・・・」
「みすずと一緒に過ごした日も忘れて・・・」
「みすずを愛していた感情を忘れて・・・」
「俺が消えてしまう」
「でも・・・」
「それでも観鈴のそばにいたい。」
「その思いだけは、ずっと忘れずにいるから」
愛してる人のことを忘れたくない。
でも忘れないと無力感にずっと苛まれる。
何がいいんだろう。
どちらにしても、どんどん大切な思い出を忘れていっちゃいます。
晴子が戻ってくるまでは、そらを通して悲しみで泣く場面が多かったです。
無力って本当に嫌です。できることがたくさんあるって幸せだと思います。
ちなみに、そらの「その思いだけは、ずっと忘れない」という言葉通り、次に転生する時も観鈴の側にいるでしょう。
最後に観鈴がゴールして、晴子が新たな人生を歩み始めた時にそらはこう言いました。
「いつの日か僕は彼女を連れて帰る。新しい始まりを迎えるために」
なので、最後に出てくる子供2人は観鈴と往人(そら)の転生した姿でしょう。

順番が前後しますが、往人に励まされる夢(夢じゃなかったけど)を見た観鈴は、「ひとりで頑張る」と決めました。
「ひとりでがんばるって決めた記念日」としてジュースを1人で買って飲もうとした時に晴子が現れます。
往人も失った観鈴は晴子の愛を拒否しますが、ずっと望んでいた幸せに素直になります。
人は1人では生きていけないなーって思います。
往人が消えてしまって生きる気力もなくなってた観鈴が元気を取り戻したのは、そらのお陰でした。
そして、一緒に生きてくれる晴子が戻ってくる。
観鈴はずっと、誰かと一緒にいることができました。
誰か1人でも欠けてたら、また悲しみを次に受け継がせていたでしょう。

観鈴は言います。
「往人さんが言ってたの。二人の心が近づけば病んでしまうって」
「わたしの夢は誰かに話ちゃいけないんだよ、きっと」
観鈴がこう解釈したので、晴子は病まなかったのでしょう。詳しくは神尾観鈴2に書きましたが。
そしてある日、観鈴は記憶がなくなってしまいます。
晴子のことも覚えていません。
愛しても伝わらない。自分のこともお母さんと呼んでくれなくなる。
「うちのしとったことなんて、ままごとみたいなもんやったんかな・・・」
晴子は自信がなくなっていきます。
なんだかそう思うと母親って大変だなーって思います。
言葉もしゃべれないうちから、きっと幼い頃のことなんて子供は忘れちゃうのに、面倒みていくんですからね。
我侭言うし、思うようにならないし、子供を育てるって大変だと思います。

観鈴のパパさんが連れ戻しにくるが、観鈴は最後の最後に晴子をママと呼ぶ。
これから2人で暮らしていこうという矢先に観鈴の死が訪れる。
最後の日に、観鈴は全てを思いだしていました。
絵日記のこと、今が夏休みであること、ゲルルンジュースのこと。
往人やそらや晴子との幸せな記憶を持って、観鈴は空へとかえりました。

晴子も、悲しみを乗り越えて、新しい道を歩き始めます。
近所の保育所に通い、子供たちに色んなことを教える。そんな毎日。
「その保育所に、あほな子がおるねん」
「男の子と女の子の二人組でな、しばらく面倒みたらんとあれは落ちこぼれるわ」
この2人はラストに登場する2人の子供でしょう。

そらは観鈴を探し続けました。そらに向かって晴子は言います。
「あんたは飛ぶんや」
「翼のない、うちらの代わりに・・・」
「ひとの夢とか願い、・・・ぜんぶ、この空に返してや」
もう悲しい記憶を引き継ぐことはない空の少女。それでも、一緒にいてくれた人はまだ死んではいない。
そらも晴子も生きている。
観鈴の魂は空では1人なのかもしれません。
「今もひとりきりでいる少女。だから僕は彼女を探し続ける旅にでる」
と、そらは言って、空へ飛び立ちます。
「帰ろう。この星の大地に」
最後のこのそらの言葉は、翼人の記憶が空へとかえったことで、今までの星の記憶を空が抱いたということでしょうか。思いだすこともできない星のたくさん記憶の上に、私たちは生きています。記憶を抱く空は大地とも言えるでしょう。

最後にラストの解釈です。
そらで分かるように、転生しても時間を遡っていることはあるみたいです。
往人とそらが同じ時間を過ごしてましたしね。
そらが観鈴を迎えに行き、2人で生まれ変わります。
「彼らには過酷な日々を」
これは、観鈴と往人がすでに確定してしまっている未来を過ごすことを指してると思います。
つまり2人の転生した子供たちは、そらのように、往人と観鈴と同じ時間を過ごすんですね。
「そして、僕らには始まりを」
もう悲しい記憶なんて引き継がない、過去にとらわれない新しい始まり。
それがここからスタートするのです。
「じゃあ、その前に確かめに行こうか」
「君がずっと確かめたかったこと。この海岸線の先に、なにがあるのか」
「今なら、その先に待つものがわかる。僕らは」
「この先に待つもの…。無限の終わりを目指して」
この言葉は、もう悲しい記憶を引き継がないかどうか確かめるってことじゃないでしょうか。
無限だと思えた1000年の悲劇。
それはもう観鈴によって終わったことを知っています。
だからこそ「その先に待つものがわかる」と言っているのだと思います。
これから2人で仲良く暮らしていき、記憶が引き継がれることもなく生を終えた時こそ、無限の終わりをはっきりと理解するのでしょう。
その終わりを目指して、これから2人の新たな人生は始まります。
「さようなら」
今まで、往人からそらとなり、観鈴の近くにいました。往人一族皆、空の少女を救おうとしてきました。
しかし、もう空の少女はいない。探さなくていいのです。
過去の呪縛に、「さようなら」と別れを告げたのだと思います。

観鈴編は分かりにくいところが多いので、ほとんど解釈になってしまいました。
でも、こうやって解釈すれば、楽しいんじゃないかなーっと思えることを書いたので、まぁよし。
解釈なんてしなくても、感動するんですけどね。
やっぱり納得いかないところがあると、んん?って思っちゃって釈然としないので。
一応、私がんん?って思ったところを考えて解釈してみました。
これ見てスッキリしてもらえる人がいれば嬉しいです。
長くなったし、感想は主に「全体」で書こうかな。


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